第1章 壱 〜流転〜
ずぶ濡れになった着物を籠に入れ、タライに張られたお湯に体を預ける
少し熱めのお湯が心地よく、緊張がほぐれて行く。こちらに来て初めて息がつけた。
「本当に…有り難い事…」
異世界に流され、右も左も分からない娘など仕事の邪魔なだけだろうに…
水夫達は決して責めずに、それどころか風呂や着替えまで用意してくれる。
すっかり温まった体を拭きながら、用意された着替えを興味深くしげしげと眺める。
下着はさして変わらないが、衣類は恵果の世界で言うところの、グルジアに中東を混ぜた様な衣類だ。
シャツ上に袖の広い上着を羽織り、スカートも一枚では履かず、必ず巻きスカートの様な物を巻いて履くらしい。
そこまでは理解したが、いかんせん布の数が多くどう着ればいいか分からない。
余った布を頭に巻いてみたり腰に飾り結びをしたりと、四苦八苦しながら着替えを済ませ外へ。
部屋から出て来るなり、水夫達はジロジロと恵果を見回す。
何か着方が間違っているのかと心配したが、どうやらサイズ等があっているか確認している様だった。
満足げに笑い、納得した様に頷きながら恵果の肩を叩く。
『ウンウン、よく似合ってるじゃねーか。じゃあ服が乾くまでココにいてくれ。』
ニコニコと手を引いて椅子に座らせる。そして豪快に置かれる果物とミルク壷。
『喉乾いたろ?これでも食って待っててくれ。』
そう言い残すと、水夫達を引き連れて仕事へと消えていった。