第1章 壱 〜流転〜
『漂流者(ドリフターズ)?ああ、異世界から流れついたっていう連中か…』
『確かオルテの魔術師どもが集めてるって言う…アレか?』
『ならオルテに引き渡すのか?…幾らで?』
『待て待て、グ=ビンネンにも確か、いたハズだ』
『じゃあそっちに渡すのか?』
恵果そっちに退けで、ワイワイと集まり相談を始める水夫達。
彼女は彼女で邪魔にならぬ様、ひっそりと端に避けている
そうするとゴワゴワとしたタオルが頭にかけられた。
『お前ら…議論は良いが、濡れネズミになった娘を放ったらかしなのは戴けねぇぞ。』
威勢の良い声が聞こえ、振り返れば大柄の中年男が立っていた
『まずは風呂。その後は服を見繕ってこねぇとな!おら!とっとと働け働け!』
大きな手をパンパンと叩くと、恵果の方を見てニカッと笑いかける。
『せめて髪は乾かさないと、風邪でも引いたらコトだ。ほら、拭いた拭いた。』
自分のタオルで頭を拭くジェスチャーをする
何だかそれが可笑しくて、思わず笑みがこぼれる。
「ふふっ…はい。ありがとうございます。」
タオルで頭を拭き、着物を軽く拭く
これで少しはマシというものだ。
そうこうしていると、水夫達が手招きで呼んでいる
そろそろと向かうと奥に部屋に行けとジェスチャーで示される。
部屋に入ると木の大きなタライにお湯が貼っており、その脇に石鹸や油、簡素ながら着替えが一揃えあった。
ドアの外からあの逞しい声が響く。
『とりあえず、風呂に入りな!よく磨いておくんだぜ!?」