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漂流者案件承ります。〜女主人の細腕宿飯日記〜

第2章  弍〜商談〜


新しく塗料の塗り直された壁と柱を見て、思わず溜息と本音が漏れる。

「…綺麗…」

真白い壁とダークブラウンな床板が斜陽に染まる。眼前に広がる茜色の空と海…今まさにサンセットビューの時間なのだろう。
大きな窓を除けば、グ=ビンネンの街並みが一望出来る。

その景色を背景に昼寝用のソファーを2脚設え、それに生成りのシーツをメイキングする。
揃いのテーブルも2つ用意し邪魔にならない様に観葉植物を部屋に配置。
厚手の敷物はシンプルなデザインを選び、鮮やかなランプを選び吊るす。

少しずつ宵闇に暮れる町から淡い光が灯る。潮騒に混じる生活の音……幻想的でありながら、何処か懐かしい空気

「…いけないいけない。仕事しなくては。」

次は隣の会議室。元々の調度品が豪奢な為、弄る所はあまり無い。
椅子とダイニングテーブルを研磨し、壺を磨いてカーテンを新調する。
重々しい雰囲気から一変、上品で華やかな部屋へと変貌した。

「こんなモノかしら?…皆様、本日はありがとうございました。本当に助かりました。」

使用人達に首を垂れ、食事の支度にかかる。
すっかり日も暮れて皆が夕食の仕上げに追われている時、この館の主人が帰って来た。

「ただいまケイカさん。部屋を見たけど随分と清楚な内装ですね。」

「お帰りなさいませ、シャイロックさん。いえ…、とりあえず仮でああしてみました。献立もなかなか進まなくて…」

申し訳無くしていると、驚いた顔をした大番頭がいた。

「いえ、あれで十分ですよ!とても良い交渉が出来そうだ。」


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