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漂流者案件承ります。〜女主人の細腕宿飯日記〜

第2章  弍〜商談〜


オルテは諸国に戦争を仕掛け国土を広げていると聞いた。いわゆる侵略戦争だ。
それに不参加と言うことは何か思う事があり、静かなる抗議なのだろうか。

「せめて自分の領民は危険に晒すまいとした伯爵なりの労りなんでしょうか?」


その言葉に、首を横に振りきっぱりと否定する大番頭

「いえ、ただ我が身かわいさでしょう。あの強欲な厚化粧が平和主義なんて…あり得ない」


そこまで言わなくても…と思うも、断固として信じようとしない彼を納得させるだけの情報は持ってはいない。
それではお願いしますと言葉を残して部屋から去って行く背中を見送り、早速下準備に取り掛かる。

まずは交渉を行う会議室だ。そして控え室。

軽く見渡した後人手を呼び家具を移動させ、そして新しい塗料で柱や壁を塗って行く。
夕方には乾くらしいと言われその間に献立を考える。


「フランスに住んでいた人…今も貴族…オカマさんで博学……ん…よし。」


そのまま厨房に向かい、シェフと相談し試作品を作る。

交渉後に重い食事は辛いはず…そしてフランスで暮らしていた伯爵なら、『少しだけ変わった物が好み』だ。
見た事も無い食材、使った事の無い書物の中の台所設備。ハンデにならないと言えばウソになる

だが周りのサポートもありなんら苦にならないどころか、新地開拓した様な心持ちだった。

夢中で料理をし終え、やり遂げた達成感を味わっている所に左官職人が部屋が出来たと知らせに来た。
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