第1章 お願い。
「よし、よく聞けお前ら。今から個性把握テストを始める。」
「「個性把握…テストォ!!?」」
「入学式は!?ガイダンスは!?」
「ヒーローになるならそんな悠長な行事出てる時間ないよ」
「……!?」
入学式すらないなんて…。
唖然とするクラスメイトにさも当たり前だと言うように相澤先生は続けた。
「雄英は自由な校風が売り文句。
そしてそれは先生側もまた然り。
中学の頃からやってるだろ?
個性禁止の体力テスト
国は未だ画一的な記録を取って平均を作り続けている。
合理的じゃない。まあ文部科学省の怠慢だよ。
爆豪。中学の時ソフトボール投げ何mだった」
「67m」
「じゃあ個性を使ってやってみろ
円からでなければ何でもいい。早う。
思いっ切りな。」
個性を使った体力テスト…!
そんなもの聞いたこともない。でも体の内側からぞわぞわっと興奮が這い上がってくる。
これだから雄英は面白い。とさや静かにほくそ笑んだ。
だからこそ渋々でも特別入学を引き受けたのだ。
元々は、全日制の高校なんて行くつもりは毛頭なかった。
陽の光が苦手だし、夜間の高校を探そう。なんて適当に考えていた。
ヒーローにはなりたい。けどヒーロー科があるのは大体全日制だ。
むしろ夜間のヒーロー科なんて聞いたことがない。
そこに雄英高校からのお誘いだ。
私の個性は人を癒す事が出来る。
どんな怪我や病気でも死ぬ寸前でなければ癒せてしまう。
もしかするとそういった人に試したことがないだけで死ぬ間際でも助け出す事が出来るかもしれない。
今の時代癒し系個性は少ないがいる。
ただここまで強力な個性は知っている限りリカバリーガールと私くらいだ。
個性が蔓延したこの世の中でも、人類は未だ医療に頼りきっていた。
だからこそ。生徒が怪我をすることが多いここで将来働くことを前提に特別入学生を提示してきたのだ。
初めは拒否した。が、さすが雄英と言うべきかこちらの弱点をどこで聞いたか把握しており、それと取り引きだと言われた。
そのどこまでも利己的な姿勢に好奇心が湧いた。
この高校はどんな事を教えるのか ----------。