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嫌いだなんて言わないで

第1章 お願い。







「お母さん、少し日焼けした。」

「あらあら…それは大変…待ってなさい…」


もう既に痛みが出始めている腕を母に見せるとなにやら準備をはじめた。
出てくる出てくる、怪しげな薬のオンパレード。


「薬をつくるから…それまでこれを…当ててなさい…」


手のひらからぽんと音を立て現れたのはアロエ。
私はそれを受け取ると皮を切って患部に当てた。

母の個性は"開花"
好きな植物を手のひらに咲かせることができる。

その個性を活かして薬を作り医者をしている母が私は大好きで誇らしかった。



「さや帰ってたのか!どうだ学校は?」

「お父さん。おかえりなさい。
日光やだ。全日制反対。」

「あっはは!まだそんな事言ってんだなー!
きちんと日焼け止め塗っていれば大丈夫さ!

ヒーローになるんだろ?頑張りなさい!」

「うん。ありがとう」



おおらかな父。ガタイのいい体と満面の笑みでただの警察官にも関わらず少なからず世間に認知され
敵退治にも協力したことがある。あの時は個性の無断使用だなんだって騒がれて大変だった。
結局そこにいたヒーローが自分が許可したと庇ってくれたおかげで難を逃れたけど。

父の個性は"マッスル"
単純な増強型だ。ここぞという時は頼りになる。



「鞄置いてくるね」

「うん。もうすぐご飯のはずだからすぐに降りてきなさい」

「わかったよ」

「あ…さや。薬…きちんと…」

「塗るよ、ありがとう。」



部屋に上がる前に母から塗り薬を貰う。
手の中の薬を見つめる。相変わらず変な色だ。眩い緑色。

私の個性は両親と似ていない。

突然変異というべきなのか、よくわかっていない。
検証する術こそないがもしかしたらこの個性が最古の個性なのではないか。
研究者の中ではそういう者もいる。
なぜその最古の個性を私が授かったのか。発光した赤子、それより前の個性など------
吸血鬼など本当にいたのだろうか。

わからないことだらけだが、伝説通り私はコウモリになれるし血を吸う。

それだけは間違いない。


(人を傷つけるだけの個性じゃなくてよかったよ本当)



「さやー!降りてきなさーい!」







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