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嫌いだなんて言わないで

第1章 お願い。







結局誰にも血を吸わせて貰えず、下校となった。


「残念だなー。やっぱり擦り傷程度で血はくれないか。」


帰り道を1人でとぼとぼ歩く。
日が暮れて夕陽が差し込んでくる。
これくらいになると紫外線の量も落ちてくるし、昼間よりぐんと楽になる。



「日光がだめなのなんとかならないかなー。」



いくら吸血鬼の個性であっても、砂になるほどではないが
かなり日光に弱く、少し日焼け止めを塗り忘れたりするだけで
全身がひどく焼けてしまう。

この個性の欠点の一つだった。



「腕…少し赤いなー。あとで冷やさなくちゃ。」



フードを抑える手にぐっと力をこめ、電車に乗るべく駅に向かった。








駅に着くと帰宅ラッシュに巻き込まれぎゅうぎゅう詰めの電車に押し流されるように乗った。
スマホをいじることすらままならない状況で、ぼーっと広告モニターを眺める。

こちらをちらちらと見てくる他人の視線にも慣れたものだ。
自分の服装が変だということも自覚がない訳じゃない。



"次は〜〇〇駅〜"


(あ、ついた。)



人混みをなんとか割りながらホームへ降り立つ。
パラパラと数人が同じようにして降りている。そんなに大きな駅じゃない。いつもこんなもんだ。
そこに、見覚えのある影がいた。


(あれは ------------ 爆豪?)



体力測定でデモンストレーション役をやっていた。
最下位の男の子になにやら突っかかっていた。

それぐらいの印象だったが、なぜか覚えていた。



(同じ駅だったのかー。)



どこぞのヤンキーよろしくポケットに手をいれ背中を丸めて歩く彼を横目に、さやは自分の家に向かって歩いていった。









「ただいまー。」

「あら…おかえりなさい…。」

「お母さん今日もおどろおどろしいね。」


私の母 鬼無薬与(やくよ) は医者である。

専ら薬剤師のように薬を出して治す。手術なんかは滅多にしないし本人も得意とするところではない。
母は私と違って好きでマントを被り好きで吸血鬼の様な格好をしている。
顔のがいこつっぷりも相まって私より吸血鬼らしい。








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