第4章 水中ジョージ🚹/尾浜/微裏/現パロ
ほんの数億年、それとも数日、深海に留まることを許されたふたりはついに、地上へと帰還したのだ―――俺は起床して、そう理解した。朝日の満ちる大気のなかに。
もはや、マリンスノーが揺蕩うのを見ることはない。
ちろちろと歩くオオソコエビに着いて、雪原のような海底を漫ろ歩いたり、その雪原の静寂なかに、鯨の白骨が埋まっているのを、目の当たりにすることもない。
ここは朝、雪の街だ。
水音のするほうへと俺は向かい、懐かしくなって、顔を洗う同居人に抱きついた。
「きのうはあのまま、ほんとうに眠っちゃった」
そう笑う勘右衛門のお腹を撫で、首筋にキスする。
「あ、待って」
「?」
いま取り出した、歯ブラシを立てたコップを置いたまま、勘右衛門は身震いした。
「勘右衛門に触りたい」
「だ、だめ」
その首筋を庇うように、肩を竦めてしまうと、俺は耳にも齧りつき、吐息たっぷりにキスを繰り返した。
勘右衛門は耳を触られるとほんとうに幸せそうだから。感覚を満たしてもらえるからかもしれない。ほんとうに彼は俺のことがすきだ。
「きもちい?」
その腰が揺れているのを見る。それでも、俺は股間に触れない。
「た、堪んない……」
「俺は勘右衛門を触りたいだけだよ」
バグやキスでもだめなの?
「だからだめなんだ!さ、最後までしてくれないくせに…ぁっ」
勘右衛門の恥骨が、ちょうど流し台に当たっているみたいだ。鏡には泣きそうに上気した顔が映る。
ゆらゆらと、腰は動き、自覚があるのかないのか、気持のよいところを求めてくねりつづけるのだった。
俺自身はただ彼のしたいままにさせてみる。
「…んんン…」
耳を嘗めると、唾液の音に身震いし、勘右衛門の腰の動きは早まる。彼はつぶやいた―――見ないで。