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第1章 静寂が囃し立てる/左門/現パロ


…本当に間抜けな質問してしまったと思う。神崎君が私の差し入れなんか欲しい訳ないのに。

でも、彼は真剣に悩んでくれた。


「えー、マネージャーか、差し入れ…」


唸ってまで悩む彼を私は初めて見た。
いつも物凄い決断力でさっさと物事を決めてしまう神崎君をこんなに悩ませてしまった事が、物凄く悪い事のような気がして、私はますます焦りまくった。

何でこんなに悩んでくれるんだろう。



「ご、ごごごごめんそんなに悩んでくれなくていいから」
「え?だって…」
「マネージャーでも何でもなるから!」

「え?」


途端、彼は顔を上げた。その素晴らしく可愛い笑顔に、私は目を奪われて、自分のうっかりした発言にも気付かなかった。


「本当か!? じゃあ明日の朝早く学校来て!先生におまえのこと新しいマネージャーって紹介するから!」

「え、……あっ」


漸く、失言に気付いた時にはもう遅い。さっきは私も必死だったのだ、神崎君が悩むのをやめてくれるように。
彼は走り出していた。

「あっ、神崎く…!!」

「おれ、おまえのこと好きだからさ!一緒に部活したかったんだ!」

じゃあなーとカバンを肩に掛けて走る彼。



――――え、今何と?



走り去った彼の髪があまりにきれいだったことと、彼があんなに悩んでくれた理由を知って、私は真っ赤な顔のままその場に立ちすくむしかなかった。





誰もいない校舎の静寂が、
妙に恥ずかしかった。
(差し入れはたまにやってる)
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