第6章 寂しがりの泣きそうな夜/伊賀崎
「はい、どうぞ」
つぎの日、忍たま達の消灯時間もとうに過ぎた夜半。わたしは妙な色の虫を孫兵くんに手渡した。
「ありがとうございます、さん」
その虫を、大切そうに受けとる孫兵くん。
「いなくなった毒虫はこの子一匹だけ?」
「はい」
それから、孫兵くんは虫をその子の部屋にもどしてあげるとわたしの手を引いた。
でも何処に行くのかはわからない。ただ、ロマンチストな彼だから、きっと素敵な場所なのだろうけど。
昨夜の夢のようになるのは、わかっていた。だからこそきのうの彼の言葉通りここに来た。
夢のなかのわたしとおなじく、いまも嫌ではない。わたしは彼をおもい詰めさせすぎたのだ、彼の嫉妬深さと独占欲のつよさをしっていながら。こうなるのはわかっていた。
ふと夜空を見上げると、真ん丸い月が冷たく光っていて、満月の夜を選ぶなんてロマンチストな彼らしい、とわたしは密かにおもった。