第20章 ※猫目のぼうや/間田
「女性名はさ」
学ランのバックルを、ひとつひとつ解かれながら、敏和はつぶやいた。わたしの膝に向い合わせで座り、視線を外している。
「おれのどこが、そんなに好きなの」
まるで好きでいてはおかしいというかのように。
孤高の少年を覆う黒髪は、うつむくと、その両肩から滑り降りた。
「そうね…」その髪の奥の、暗い目を見つめる。「以前は、髪がいちばん好きだったんだけど」
「…おれの髪、よく梳かしたがるもんな、女性名」
いまは?―――敏和のことばを待たず、わたしは彼のズボンのベルトを外した。
手の甲を押し当てたその口から、吐息が漏れる。
敏和の顔にかかった黒髪を、耳に掛けてあげた。
病的な白い肌、薄い瞼。
そうして、股間から手を離してしまった。
「あ…」
寂しそうに声を漏らすも、敏和はわたしの肩に手をやり、ひとりでに腰を跳ねさせたとおもうと、仰け反った。
「……ふー…」
喉が露になり、肋が皮膚のしたでスライドする。
肋骨弓が浮かび上がる。痛々しいほど露になった鎖骨、あられもなく尖る骨盤の両翼。
すると、視界に、白い飛沫が少量、迸ったのだった。
腹にかかった精液を指で掬い取り、その指を敏和のお尻へ滑り込ませると、彼はおもわず、わたしの肩にすがった。
「はぁ…ッま、まえがいい……」
中途半端に果てさせられたことに不満をいいながらも、お尻は跳ね、もっと、と穴を露出させるようにうえへ突き出され―――
「…ダメ!」
ナカで敏和が果てると、ふたりはベッドに倒れこみ、彼は心許なげにわたしのシャツの胸にしがみついた。
おれのどこがいちばん好きか、当ててあげる――――腕のなかのくぐもった声はいう。
「肋、でしょ」
「 … 」
「ズボンだけじゃなくわざわざ上も脱がすの、なんでだろうとおもっていたんだ。しかも、最中は上ばかり見てるし」
変態、とつぶやく彼の肩を、わたしはそっと押して、仰向けに寝転がらせた。
「しゃぶりたい」
うっとりとつぶやく。
「…肋を?」
「骨の髄まで」
呆れながらも、敏和は、「スペアリブ食べたい」といって笑った。
☆
スペアリブがどこのスーパーにもないです……