第19章 話しかけると溶けるペンギン/間田
「敏和なんか痩せた?」
そんなわたしのつぶやきから、ふたりでかってに保健室に入って、健康診断でしか見たことのないようなおおきな体重計のキャスターを、カラカラ引いた。
ガタンッ
「 … 」
針が文字盤のうえで揺れる。
50、いや30…揺れ幅が狭まってゆき、やがてそのあり得ない数値を見て、計らなければよかった、という後悔がわたしをずっしりと襲った。
「な、なんキロだった」
敏和もまた立ち尽くしてしまう。
「50キロ…」
「もない」
そんな数字にはぜんぜん届かない。
「しつれーしまーーす」
すると気だるげな声とともに、ガラガラと入口が開けられ、1年生の仗助くんが入ってきた。
「…東方仗助じゃねえか」
「なにしてんスかふたりで体重計なんか出して…」
「…」
わたしたちの異様に重たい雰囲気を察して、仗助くんはそっか、という顔をした。
「だいじょうぶ、その体重計ちょっと壊れてるらしいぜ」
「!」
「そこから1キロマイナスしてって、先生がいってたからよ。あと服のぶんも引くんだぜ」
「……?!」
「もうやめてええッ!これ以上敏和の重さを奪わないでえええ」
そのとき、敏和もまた叫んだ。「そうか!」
「空腹時だからだッ」
「そうだったの?」
「…朝マックしたばかりだった」
「それすげえ満腹じゃねえか!なんでウソつくんだよ!」