第13章 つまりは噎せるほど憎たらしい/ 呪いのデーボ
それは明らかに、求婚の場面だった。しかしいま、声援を送る見物人はいないのだ。
ただ、靴のレンタルを提供していたスタッフや、さっき入場券を確認したスタッフたちが、手持ち無沙汰に、こちらをぼんやり眺めているのが見えた。
おれは、花束も指輪も持たないが、真っ直ぐに相手を見上げ、「理由はないけれど殺してやりたい」などという、光栄なことばに応えることにした。
「おまえの憎悪で、惨めに腐らされて殺されたい」
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ロックフェラー・センターのクリスマスツリー点灯式の翌朝のお話でした。
厚着して、髪をほどいているデーボはもはやだれなのかわからないですね