第12章 ハヴ・ア・ドリーム/億泰・形兆
「脱げっ」
空のどこまでも広がる朝だった。朝食のあと形兆におとなしくボンタンとスカートを差し出した億泰とわたしは、居間にパンツ丸だしで座りこむことになったのだった。
「億泰のパンツ」
「なんだよ」
「いやらしい」
「いやらしくねーよ、クールだろが!」
ワシントンや、ワシントン、リンカーン、ワシントン、ワシントン…それとだれかしら、この禿げ上がったおじさんは…彼らと目が合ってしまうのでわたしは気まずく、声をあげずにはいられなかった。億泰のパンツにはドル札がたくさんプリントされていたから。
「女性名こそ、なんだよ、そのパンツ…」
億泰もまたわたしの背後を指さして、顔をしかめた。
わたしのパンツの背面には、丸い顔をしたたくましいトラの顔面の写真がプリントされていて、ちいさな鋭い双眸で正面を睨んでいるのだ。
「なんでパンツに迫力を求めたんだよ」
「べつに迫力を求めたんじゃないのよ。よく売ってるパンツでしょ」
「てめーおれに女っけがないからってテキトーな情報刷り込むんじゃあねーぜ!!女子のパンツがみんなこんなもんのわけねーだろが!!」
「由花子さんのパンツはアフリカゾウ柄だったわ」
「なにいぃぃ っつーかなんで由花子のやつのパンツを見る機会があんだよ!!女子どんなことやってんだ!!」
「かなりの迫力だったわ」
「できたぜ」
すると、億泰にボンタンがついっと差し出された。