第8章 永劫のほし/ジョセフ
オルガンの、聴き覚えのある音楽が、廊下に寂しげに響いていた。
鍵盤のうえで指が滑らかに踊るのを思い浮かべる。輪唱のように旋律が旋律を追い、屋敷を跳ね回りながら巡るようだ。それでもふしぎと寂しげに聴こえ、わたしがしっているその曲とは、まるでべつもののようにおもえた。
廊下を進めば、リードオルガンのあるらしい部屋の、開いた扉を見つける。
そこからいろいろな楽器が見えていて、わたしは驚いてしまった―――この屋敷には音楽室がある!
When the boat comes in;
Thou shalt have a codling
Boiled in a pan -
Dance to your daddy,
My little man.
なかから聴こえる旋律に合わせて口ずさむと、わたしはそれがマザーグースの一曲であることをおもいだした。
「だれ」
はたと、音が止み、オルガンに向かっていた少年は入口を見た。
よほど、演奏に集中していたのかもしれない、その目は、ふと現れた、しらない少女を見て戸惑っていた。
わたしは扉のところで彼に向き合った。少年は背が高く、いくつくらいなのかわからない。前髪の跳ね上がった黒髪、物憂げな眉。そのしたの賢そうな双眸。
「あんたは…」
客間から追い出されてきたのよ、いま、ママがこの家のミセスとお話ししているから―――そういって、わたしは、その緑がかった瞳に名乗った。
母はこのジョースター家の夫人と、なにかおたがいの家政の、とくに経済のことで話し合っている。あまり娘に聞かせたくないらしい。わたしは別室へ通されたけれど、オルガンが聴こえ、ふらふらと出ていってしまったのだった。
☆
エリナさんは小学校の教師だしオルガンを弾けるかもしれない、それをジョセフもマネするかもしれない…とおもったので
頭が良いから音階がちがっていようともジャズのようにつぎつぎアレンジして弾いてしまうといいです