第38章 私立リアリン学園!15時間目~ミシェル~
六時間目が終わった。今日一日の授業を終えて、ほっとしながら、ん~っと伸びをして、職員室の前に立つ。
ドアを開けようとしたところ―――。
「オホホホホ」
甲高い女性の笑い声が聞こえてきた。
すぐに、アードラー公爵夫人が来てるんだと察知し、緊張しながらゆっくりとドアを開ける。
こちらを背にして、ジル教頭と向かい合って椅子に座り、話をしている。
「ジルったら、そんなご冗談を。オホホ」
と、またもや豪快に笑い声を上げた。
え~、あんなに笑うほどの冗談をジル教頭が言ったの?聞きたかったなあ。もっと早く来ればよかった。
そう思いながら、チラリと横目で二人を見る。
金髪まじりの銀髪の艶やかな髪を高い位置でキッチリとまとめている。元々は金髪なんだろうな、素敵に歳を重ねた証のように、白髪が銀色に輝いて見える。
ふっくらした体型に、遠目にも上等なものだとわかるゆったりとした薄いブルーのドレスを身につけている。
私より小さそうだけど、背筋をしっかり伸ばして座っている堂々した後ろ姿は、並々ならぬ存在感だ。
挨拶した方がいいのかな。でも、お話し中だよね。終わったらにしようかな。でも、私みたいな一教師が声を掛ける必要があるかな。
一瞬、ジル教頭と目が合った。迷いながらも、静かに自分の席に向かう。
と―――。
「貴女が、マイン?」
アードラー公爵夫人がクルリと向き直り、その高い声で私の名を呼んだ。
ジル教頭の視線が逸れた瞬間を見逃さなかったのだろう。洞察力がすごい………。