第38章 私立リアリン学園!15時間目~ミシェル~
「顔を上げて背筋を伸ばし………もう少し力を抜くといい」
そ、そう言われてもっ。ドキドキし過ぎて、か、顔が上げられないっ!
「マイン」
低く、厳かな口調で名前を呼ばれて、ゆっくりと顔を上げる。
その夜色の瞳は、深く澄んでいて、吸い込まれそうだ。今度は逆に、目が離せない。
ジャンッ。
音楽が鳴り始めたので、それに合わせて急いで身体を動かす。
と、なめらかに、それでいて軽やかにステップが踏めていく。
え、嘘、なんで?
さっきまで、めちゃくちゃだったのに………。
―――あ、そうか。ゼノ様のリードが完璧なんだ。
主導権を握って導いてくれていながらも、私の動きにも沿ってくれている。
お互いの身体がしっかりと密着しているので、一体感があり、安定して踊ることができている。
ダンス、楽しい―――!!
「やっと笑ったな」
「あっ、そうですね」
「楽しいか?」
「はい、とっても!」
「そうか、俺もダンスが楽しいと思ったのは、初めてだ」
「え、ゼノ様も!?」
………ゼノ様って、今までにもダンスの経験あるよね?
それなのに、今、初めて楽しいと思えてるって?
「ステップは、頭に入っているようだが、先ほどまでは、踊れていなかった。なぜだ?」
「ん~、なんででしょう?間違えちゃいけないとか迷惑かけないようにとか、そんなことばかり考えてて、楽しむことを忘れてたからでしょうか。ゼノ様のリードがお上手ですし、これだけくっついていると、一つになってる気がして動きやすいですよね。距離感って大事なんですね」
と、そこまで言って、妙に恥ずかしくなる。
改めて、この密着感を思い知ってしまう。
「距離感か。俺は、他の男とおまえが踊っているのを見ていられなかった」
「え、それって、あまりにも下手でってことですか?」
「いや、そうではなく………」