第36章 私立リアリン学園!14時間目~ロベール~
そうか、もう完成間近なんだ。
絵を描き終わったら、もちろんモデルをする必要がなくなる。
元々、テスト期間だけの間の約束だ。そして、そのテストも、もうすぐ終わる。
そうしたら、もうここに来ることもなくなるのだ。
いつものようにソファに横になって、教科書に目を落とす。文字を追うけれど、内容がまったく頭に入ってこない。
教科書越しに、ロベール先生をチラリと見やる。
さっきまでのやり取りで、昨日の気まずい雰囲気がなくなっていることにホッとする。
しんとした美術室には、キャンバスを滑る絵筆の音だけが心地良く響いてくる。
ん、あれ?
こんなにも静かな中、屋上でヴァイオリン弾いていたなら、聞こえないわけがないよね?
美術室のすぐ上が屋上なのだ。
でも、この数日ヴァイオリンの音なんてしたかな?外界の音が耳に入らないくらい、勉強に集中してたっけ?
と―――。
「描きあがったよ」
コトリと筆を脇に置き、フウッと小さく息をついた。
「おめでとうございます」
おめでとうという言葉がふさわしいのか、よくわからないままに、そう口にして。
心の中は、残念な気持ちでいっぱいなのに―――。