第36章 私立リアリン学園!14時間目~ロベール~
「問1だけ、どれが正解かわからなくて困ってるんです」
「ああ、これか。なるほど、かなりな引っ掛けだね」
ロベール先生が、急にフフッと笑い出したので、戸惑ってしまう。
「えっと、笑うとこですか?」
「ああ、ごめん。さすが、ディーン先生だなと思って。鬼畜な彼が作りそうな問題だ」
「き、鬼畜?」
ディーン先生―――世界史の担当の先生を思い起こしてみる。
確か、若くてスラリとした、目鼻立ちのハッキリとした人だったような………。
「これは、じっくり全文を読んでいたら時間がなくなる。ウィスタリア諸国で締結された条約のうちで、特に重要なものが鍵かな」
「貿易ですよね。消去法でいって、aとcに絞ったんですが、aかなと」
「目のつけどころは、いいね。aはその他にシュタインの貿易政策についても述べている。でも、これは前国王の時代のことだね。条約締結の時代の話と現代の政策をうまく織り交ぜてある。これを正解と錯覚してしまう生徒も多いだろうね」
「じゃ、cが正解ですか」
「そうなるね。cはかなり曖昧な文で、これを選ぶのは、どうも躊躇したくなるけど」
「答えが、わかってよかった。スッキリしました」
さすがロベール先生と思いながら、こんな高度な問題を作るディーン先生もすごいなと感心する。
「俺の方も始めてもいいかな」
「あ、ごめんなさい。私ばっかり質問しちゃって。絵を描く時間を削っちゃいましたね」
「大丈夫だよ。もう完成間近だから」
ロベール先生は、部屋の奥へと向かい、シャーッと音を立ててカーテンを閉めていく。