第36章 私立リアリン学園!14時間目~ロベール~
マズイと思ったけど、後にひけなかった。ロベール先生の表情の変化に気づかないふりをして、できるだけ淡々と答え、更に続ける。
「リアリン市国が友好関係のあった国の影響を受けているなら、その国々の歴史もある程度覚える必要がありますよね?それが、消滅してしまった国であったとしても」
怯まずに、まっすぐと、その深い悲愴感をにじませた眼差しを捉える。
そうしていながらも、頭のどこかで冷静な自分がいる。
今、なぜ、彼を責めたてるような構図になっているのだろうか………?
明らかにロベール先生は狼狽している。何かを隠しているのは確かだ。知られたくないと必死なことも伝わってくる。でも、それはおそらく、私にはなんら関係のない事だろう。
それなのに、小さなほころびを見つけた私は、彼を追い詰めようとしている―――。
単なる好奇心で、他人の過去を暴いてはいけない。それが、触れられたくない事柄なら、尚更だ。
「あの、この………」
この話は終わりにしましょう―――そう言いかけたところ、先に口を開いたのは、ロベール先生の方だった。
「ブランデンは、俺の生まれ故郷なんだよ」
「………」
唐突な答えに、思わず目を見開いた。