第36章 私立リアリン学園!14時間目~ロベール~
「勝手に入ってごめんなさい。あの、絵を倒してしまって」
「怪我はないかい?」
ロベール先生は、心配そうにすぐ横にしゃがみ、私の顔を覗き込む。
「大丈夫です。でも、絵が………」
「いいよ、気にしないで。古い絵を整理していたとこだったんだ。ここは散らかってるから向こうで待っててくれるかな」
私の手から紐を取ると、絵を重ね、きっちりと束ね始めた。
手伝えることがなさそうだ。
小さく頷いて立ち上がり、準備室を出る。
暗がりから抜け出て突然視界が開けたからか、辺りが眩しく感じられて目を細める。
「コーヒーでも飲むかい?」
準備室の奥から、ガタガタという音とともに、くぐもった声が聞こえる。
「あ、いえ」
コーヒーと言われて、ためらいがちに言葉を濁す。
準備室から出てきたロベール先生は、端にある洗面台で手を洗い、掛けてあるタオルで拭いている。
それから、傍らに置いてある小さな食器棚からカップを取り出した。
「そうか、マイン先生は、コーヒーが苦手だったよね。じゃあ、紅茶を淹れてあげるよ」
「………ありがとうございます」
いつのまにか私の好みを把握している。ちょっと嬉しいかも。