第5章 私立リアリン学園!序章
そんな私の頭上から、別の人の声がする―――。
「女の子にそんな言い方、失礼だよー、ねー?」
目つきの悪い彼の言葉を遮って、連れの長身の男の人が、文字どおり私達の間に入って来て柔らかく微笑んでいる。
あ、なんだか癒しの雰囲気を持った人―――。
泣きそうになっていた私にとっては、まさに救世主の存在だ。
首の後ろに手を置いて、穏やかな顔つきで私を見ている。
ニッコリと笑顔を向けられると、つられて私も笑顔になってしまう。
「お前、何ヘラヘラしてんだよ………こんな奴に、どんな言い方しようと俺様の勝手だろ」
目つきの悪い彼、前者は私に、後者は癒しの彼に向かって言い放つ。
………うっわ~~。
この言い方!
この人、自分のこと俺様、って。
ずいぶん自信たっぷりなんだなあ。
………なんて、妙なトコに感心してしまって。
いやいやいや、ありえないわ!!
自意識過剰もいいとこ!
「ごめんねー。もっとお話していたいけど、もう行かないと遅れちゃうからー。ねー、これ、もらっていー?」
そう言いながら、癒しの彼は、私の持っているカゴからティッシュを一つ、手に取る。
「あ、どうぞ」
「ったく、誰のせいで時間ギリギリになったと思ってんだよ」
俺様男、癒しの彼に文句を言っている。
「あー、うん、ごめんー。俺が寝坊したせいですー」
そう言いながら、癒しの彼は、私に軽くウィンクすると。
「今度、モエ~ルに遊びに行くねー!リリカちゃん♪」
あ、私の名前………って、名札つけてるからか。
正確には、バイト用の名前だけど。
あの、ゆったりした笑顔に癒されるなあ。
なんて。
ほんわか、していると。
「コイツがいる店行ったって、どうせ、つまんねえだろ。よそ行こうぜ、よそ」
俺様男は、意地悪な笑みを浮かべて、皮肉たっぷりにそう言う。
―――ほんっと、やな奴!
「さすがにそれは言い過ぎでしょー。ごめんねー、口悪くて………」
「行くぞ」
癒しの彼が私にまだ言いかけているのに、俺様男は彼の肩を掴み、歩き出していく―――。
私は、二人が去ってからもしばらくは、ムカムカがおさまらなかった。