第5章 私立リアリン学園!序章
「よろしくお願いしま~す」
今日は、表通りでのティッシュ配りから。
これも、お仕事の一貫である。
この宣伝で集客はどれだけ期待できるのだろうか、疑問だけど。
一応、お決まりの宣伝パターン、ティッシュ配りとビラ配り。
うちのカフェって、他店が満席な時に客が流れてくるってだけな感じだしねえ。
ま、それだから、ある意味気楽。
そこそこ忙しく、適度に暇もあり。
それに、このピンクのフリフリレースたっぷりのミニスカメイド服なんて、そうそう着れる時ないから今を楽しまなきゃ、ね。
けど………。
あ~~、私、これからどうなるんだろう。
来年4月になったら、教職に就けるかどうかもわからない。
先のことなど、まったく決まってなくて。
決まるあてもなくて。
ずっとここで、こうしてメイド続けるのかな。
それも虚しいなあ………。
そんなことを、ぼんやり考えていると―――。
差し出したティッシュを持つ手が、通りすがりの人にぶつかってしまった。
「………っ、あ、ごめんなさい」
慌てて、謝るけれど。
―――ギロリ。
ぶつかった相手の男の人に、鋭い目つきで睨まれてしまった………。
「痛ぇな。こんなとこでボーッと突っ立ってたら、邪魔なんだよ」
「すみません………」
私は、小さくなる。
ヤバイ~ッ。どうしようっ。
運悪いよぉ。
と、目つきの悪いその人は、私の手から、持っているティッシュをすっと取り上げる。
「メイドカフェ☆モエ~ル………?アホらし」
ティッシュの文字を読み上げると、バカにしたように口の端を上げて、笑う。
私は、その態度にムッときて、顔を上げてとっさにティッシュを奪い返す。
「そ、そんな態度の人には、もらってほしくないです!」
きっぱりと言い切って。
―――あ、………と。
いけないっ、つい反論しちゃった。
キャー、どうしようっ!
「はあ?テメエ、何だよ、その態度………」
―――怖いっ!!
両手をギュッと握りしめる。