第34章 私立リアリン学園!13時間目~レイヴィス~
「静かにしろって」
「だって、どう見ても痛いのわかるのに触るからっ」
「どうしたら、そんなに腫れるわけ?おっちょこちょいって、お前みたいなこと言う時に使うんだな」
そう言って笑っている。
「そんなこといいから、早く練習に行ったら?」
「言われなくても」
レイヴィスは、観客席の中央からステージへと向かっていく。
演奏をしている生徒達の何人かが気づいて、こちらに目を向けている。
指揮者もその視線に気づいたようで、首だけ振り向き、レイヴィスの姿を確認する。けれど、指揮をする手は止まっていなかった。
片手をついてステージに飛び乗ると、一番手前の空いている席に座った。あの席位置からするとレイヴィスがコンサートマスターなんだね。
ちょっと見学していこうかな。一番後ろの席に静かに座り、鑑賞することにする。
ヴァイオリンを構えると、すぐに演奏の輪に入っていった。
途端に―――ガラリと音が変わった。
なんというか………とにかく、レイヴィスの存在感がすごい。
さっきから聴いていた演奏だってプロ並みだと感心していたけれど、それ以上の力量と技術力と表現力………とにかく、圧巻の演奏なのだ。
彼が流れを変え、このオーケストラの頂点に立ち、強い力で引っ張っている様がヒシヒシと伝わってくる。
レイヴィスの真剣な横顔。弓が弦に吸いつくように流れていく。ため息が出るような滑らかで綺麗なボーイング。そこから紡ぎ出される繊細さと力強さを合わせ持った感情豊かで膨らみのある音色―――。