第32章 私立リアリン学園!12時間目~アルバート~
「夏休み中にカフェで会ったことは、覚えてますか?」
ごまかすような唐突な問い。けれど、すぐに何を言いたいかを理解した。
「ん?うん、もちろん。痛かったから、よ~く覚えてるよっ」
「あれは………っ、常に警戒を怠らないようにしていますので、つい………不審者扱いして、すみませんでした」
親友の結衣と飲みに行く約束をしていて、時間つぶしに入ったカフェでの事が思い浮かぶ。
そういえば、あの後、目が合った時、不自然な反応だった。
『なっ………、あなたは、もしや………いえ、なんでもありません』
驚いたように私を凝視して、そう言った気がする。
「もしかして、あの時、リリカだって気づいた?」
「もちろん気づきました。あなたは、まったく覚えていない様子でしたね。まあ、一度きりの客の事など覚えていられないですよね」
「私、人覚えるの苦手なんだよね。それなのに接客とか笑えるよね」
「別に笑いませんが………あの時から、薄々感づいてはいました。空想と現実は、別物なのだと。カフェにいたのはマイン、あなたであって、リリカではなかった」
「またそれ?」
「この話は、これきりにしましょうか。心の片隅に止めておく必要はありません。忘れてくれて構いませんから。いや、むしろ、そちらの方がありがたい」
決まり悪そうに目を伏せるアルバート。