第32章 私立リアリン学園!12時間目~アルバート~
「マインとリリカ、同一人物として受け入れてほしいというあなたの要望には応えられない。この際、はっきりさせておきましょう。女性に対して、このような事を面と向かって言うのは申し訳ないのですが………俺は、あなたには興味ありませんので」
「はあ?待って、意味わかんない。この、なんか私が振られてるっぽい展開、絶対変でしょ!?」
「あなたに理解してほしいとは思いません。俺は俺の信念を貫くので、気にしないでください」
「………あの、信念って、気にしないでって言われても………本っ当に、ワケわかんないんだけど!?」
「みかの原 わきて流るる いづみ川 いつみきとてか 恋しかるらむ」
アルバートが、小さく呟いた。
『新古今集』恋一、藤原兼輔の歌。百人一首の一つだ。
みかの原を分けるように湧き出て流れる泉川の名のように、いつ見たわけでもないのに、いつの間に湧き出た気持ちなのだろう、この恋しい気持ちは。
歌の意味を頭の中で解説して―――返答に戸惑う。
そっとアルバートを伺うと、ハッと我に返ったように目を見開いている。
「い、今のは、何でもありませんので」
ガリガリと頭をかきながら目を逸らす。ポケットからハンカチを取り出し、顔中に吹き出した汗をしきりに拭っている。
無意識のうちに発した歌だったのかな………。