第4章 ピアノレッスン~シド~
~実り~
ふと、ピアノの音が止まる。
驚いて私も手を止め、シドへと顔を向ける。
シドの射抜くような鋭い、まっすぐな瞳。
シドが片手を静かに上げ………。
私は、反射的にビクリと身体を震わせる。
「んな、顔すんな。なんもしねえよ」
そう言いながら、私の前髪をかきあげる。
私の頭の上に置かれる、シドの大きな手。
「悪かった」
急にシドが、そう言う。
………え、嘘。
シドが謝るなんて………。
私は、あまりにも意外で、シドをじっと見続ける。
「なんだよ」
「だって………」
シドは、私の頭の上で、髪を軽く引っ張ったり、指に巻きつけたりしている。
その仕草が、あまりにも優しくて。
私の両の目からは、いつのまにか涙が溢れてきていた………。
「お前の泣き顔は、見たくねえ」
「………っ、いつも泣かせるのは、シドなんだけど」
「もう泣かせねえよ」
そう言うと、顔を近づけてきて………。
私の額に、口づける。
「………っ!」
「嫌なら、やめとく」
シドが、ゆっくりと離れていく。
嫌なわけ、ない。
私もシドを欲している。
―――媚薬。
もしかしたら、それは、私にも効いているのかもしれない。
そんな事を思いながら。
私は、シドの首に腕を回す。