第32章 私立リアリン学園!12時間目~アルバート~
そして、夏休みが明けた。
芽留先生の代わりにやって来た新任教師―――マインと出会った時、心の中の何かが崩落していくのを感じた。
教壇に立つマインは、華奢な身体つきに、あどけない顔。その姿かたちは、リリカによく似てる。しかし、決定的に何かが違うのだ。
まっすぐの黒髪。控えめな化粧。ブラウスにスカートという地味目な服装。虚勢を張っているのか無駄に大声で、よくわからないジェスチャー混じりに、時々おかしな語彙が飛び出す授業。笑う時は、盛大に口を開けて身体をよじらせる。怒る時は、突然カッとなり、滅茶苦茶に手を振り回す。自分でワケがわからなくなってしまうようで、言いたいことをまくしたて終わると、途端に我に返っておとなしくなる。
なんというか………よく言えば感情表現豊か。悪く言えば幼稚な彼女。
………これが、俺のリリカか?
リリカとマイン。
同一人物として括る事は、本能的に受け入れがたい。リリカのあの天使のような愛くるしい様を、マインからは微塵も感じられないのだ。見れば見るほど二人のギャップは埋まらない。それどころか、かけ離れていく一方だ。
しばらく理解に苦しんだ。
悩みに悩んで―――。
そうして、出した結論は―――リリカとマインは、まったくの別人。そう思うことにした。
ここに至って、やっと気持ちが楽になったのだ。