第32章 私立リアリン学園!12時間目~アルバート~
白とピンクで統一された店内は、所々にクマやウサギ等のぬいぐるみやリボンが飾られている。なんというか、まるで、乙女の部屋だ。テンポのいい曲がうるさいくらい耳に入ってくる。
『ほらあ。恥ずかしがってないで、入ろうよ?進めー、進めー』
ユーリが俺の背中を押しているが、俺の心は、もうすでに回れ右だった。ココは、完全にアウェーだ。棄権するのが一番だ。
俺には、場違い過ぎる―――。
そう結論に達し、帰ろう、と口にしかけたその時。
目の前の人物と目が合い、息が止まりそうになった―――。
『あの、どうぞ?うちは、どちらかというと普通のカフェに近いですし。そんなに、かしこまらなくても大丈夫ですよ』
………っ!
リリカ――――――!!!
『だよね?表通りのすっごい萌え萌えには、ちょっと入りづらいけど、ココならって思って』
硬直状態の俺に代わって受け答えるユーリ。この時ばかりは、コイツの存在をありがたく思った。
そして、次の瞬間、俺は、すべてを感じ取った。
リリカは、ユーリをじっと見つめている。
おそらく、アイドルみたいなカワイイ男のコとでも思っているのであろう。リリカだけではない。他のメイド達も一斉にユーリへと視線を向けている。
昔から慣れた場面だ。気にすることなどない。俺にとってはむしろ、ありがたい状況だ。不躾な視線をリリカに向けているというのに、気づかれていないのだから。