第32章 私立リアリン学園!12時間目~アルバート~
「この札は、『む』が決まり字です」
『きりたちのぼる あきのゆふぐれ』と書かれた札をそっと指差し、太宰さんとユーリに聞こえないように耳元で囁くアルバート。
「そうなんだ。ありがとう」
私もこっそりとお礼を言い、次の札に目を落とす。
そうして―――。
「時間ですので、再開しましょう」
「え~っ、もう!?………あぁ、そうだよね、待たせてごめん。始めていいよ」
無表情なままのアルバートに抗議するけれど。キッチリと七分計ってたんだろうと思われるので、諦める。
「では」
そうして、再び、スマホから歌が読まれる。
『いまこむと いひしばかりに ながつきの ありあけのつきを まちいでつるかな』
先ほどアルバートとユーリが取った歌の下の句が朗読されていく。
耳を澄ませて、次の音を待つ。
『ありあけのつきを まちいでつるかな―――もろ』
またもや、ババンッと札が飛んでいく―――。
「腕が落ちたのは、太宰先輩の方では?」
アルバートが嬉しさを隠しきれないといった感じで、ほくそ笑みながら、札を手にしている。
「言ってくれるね、アルバート」
皆の勢いに指先がピクリと反応しただけで、まったく動けなかった。
ユーリとアルバートは立ち上がり、飛んでいった札を拾って並べ直している。