第32章 私立リアリン学園!12時間目~アルバート~
並んでいる札一つ一つをじっくり見入り、対になる上の句を思い起こしていく。
『あかつきばかり うきものはなし』………この上の句ってなんだっけ?
だめだ、パス。
『をとめのすがた しばしとどめむ』………あ、こっちならわかる!『あまつかぜ くものかよひぢ ふきとぢよ』だ!
こっちは、『わがみよにふる ながめせしまに』
小野小町!上の句は、『はなのいろは うつりにけりな いたづらに』
「マイン先生、その『しづこころなく はなのちるらむ』の上の句は、『ひさかたの ひかりのどけき はるのひに』だよ」
「知ってるから!紀友則、『古今集』の選者、三十六歌仙の一人!ユーリは見ちゃダメ!」
ユーリが親切心から教えてくれたけど、それを強く咎める。なんといっても、対戦相手だからね。知識もそれなりにあるんだから、教えてもらいたくなんかない。
「さすが、マイン先生。やっぱり古典の先生だね。俺、邪魔しないように静かにしてるね」
ユーリがキチンと正座し直して目を閉じる。
その横で、太宰さんも目を閉じ、じっとしている。
アルバートは、私の手元の札を見続けているようだ。
それなのに、急に顔を上げたので、パッと目が合ってしまった。
「時間が惜しいので、早くしてください」
「ごめん」
お互い、顔を逸らす。
いけない、集中!一枚でも覚えなきゃ―――!