第32章 私立リアリン学園!12時間目~アルバート~
「さ、最初の一文字ぃ?」
「ええ、マイン先生は、まだ読んでいないのに札を取りに行っていると不思議に思っているようですが、皆、最初の『ほ』が読まれるか読まれないかのとこで動いていたということです」
「………」
「二首目の『今こむと 言ひしばかりに 長月の 有明の月を 待ちいでつるかな』は、『い』から始まる歌は、『いにしへの』『いまこむと』『いまはただ』の三首あります。ですから、三文字目の『こ』と『は』を聞くまでは、確定しないので札を取りには行ってませんよ」
「そんなの待ってられないよ!これだっと思ったら、勘で取りに行くんだよ」
ユーリが明るく口を挟む。
「貴様は、昔からそんな調子だからお手つきが多いんだ」
二人のそんな会話さえも頭の横を通り過ぎていく。
………呆気に取られて、言葉が出てこない。
一文字目とか三文字目とか?そんな、秒速な技が必要なんだ!
歌を覚えているとはいえ、上の句をしっかり聞いてからじゃないと下の句が浮かんでこない。
こんなんじゃ、まったく勝ち目ないじゃん!
「ねえ、せめて上の句を聞いてから取るってことにしない?」
「勝手にルールを作らないでください」
「だって。あ、じゃあ、十分ちょうだい。いや、五分………あ、やっぱり七分!」
そうして、自分の手元の札に目を落とす。