第32章 私立リアリン学園!12時間目~アルバート~
「何を言っているのですか?かるたは普通、読んでいる途中で札を取ることができますが?」
「それはもちろん知ってるよ。けど、まだ読んでないじゃん!この歌、ほら、今、読み終わったとこだよ?まだ読んでもいない札を三人とも取りに行ってるんだもん。取った後に歌が読まれてるって、順番が逆でしょ!?」
何がなんだか分からなくて、頭がパニック状態だ。
アルバートがスマホを止め、軽くため息をつく。
「マイン先生は、競技かるたを知らないのですか?」
「競技かるた?」
「あなたは、古典の先生ですよね?その前に日本人ですよね?競技かるたを知らないとは………日本文化継承の危機ですね」
「………」
なんか、かなりのひどい言われようなんだけど。
競技かるた………。
聞いたことあるような、ないような………仕方ないので、黙って首をすくめる。
「競技かるたは、読手によって読まれた歌、上の句に対応する札、取札を取り合う競技です。いかに早く札を取るという点から、ここに『決まり字』が存在します。これは、上の句の最初の数文字を聞いただけで対応する札を特定できるという仕組みです。例えば最初の『ほととぎす 鳴きつる方を ながむれば ただ有明の 月ぞ残れる』の歌ですが、最初の一文字が『ほ』で始まる歌は、『ほととぎす~』の一首だけです。そのため、決まり字を知っていれば最初の一文字『ほ』を聞いただけで『ほととぎす~』であると判断して札を取ることができるのです」