第32章 私立リアリン学園!12時間目~アルバート~
「やった!取った!」
ユーリが嬉しそうに札を大きくかざしてみせる。
「よぉし!」
太宰さんが親指と人差し指で札をつまみ、アルバートの眼前に突きつけている。
「くっ」
悔しそうに顔を歪めながらも、辺りに散らばった札を手早く元のように並べていくアルバート。
エ、エ、エエッ!?
………何が、起こったの?
『―――ただありあけの つきぞのこれる』
スマホからは、続けて厳かに歌が読まれていく。
『ただありあけの つきぞのこれる―――いまこ』
再び、ババンッと音をさせ、札が舞い散り、歓声が上がる。
「取り返しましたよ、まずは一枚」
今度は、アルバートが札を掲げ、ニヤリと笑う。
「腕は落ちていないようだね、アルバート。面白くなりそうだ」
太宰さんが着物の袖を捲り、微笑み返す。
けれど、二人ともすぐに険しい表情に戻り、札を睨んでいる。
『―――ありあけのつきを まちいでつるかな』
流れるように続いていく朗読。
「よし、次も取るぞ!」
張り切って大声を上げるアルバートの声にハッとして、慌てて大きく手を振り回す。
「ストップ、ストップ!!ちょっと待ってよ!なんで皆勝手にどんどん取っちゃうの?」