第32章 私立リアリン学園!12時間目~アルバート~
『なにわづに さくやこのはな ふゆごもり いまをはるべと さくやこのはな』
スマホから、落ち着いた声で最初の一句が読まれた。
自身の札に目をこらし、『いまをはるべと さくやこのはな』を探していた。
けれど。
ふと思いついて、首を傾げながら顔を上げる。
皆、札を見てはいるけれども、誰一人として手にしていない。
「あれえ?ねえ、この歌って………百人一首の歌じゃない、よね?」
同意を求めるように三人の顔を順番に見ていく。
と。
ガクリッ。
アルバートが大げさに頭を垂れ、スマホを止める。
「これは序歌といって、かるたの始めの歌として読まれている歌です。序歌に続いて一首目が読まれますので、序歌の間に呼吸を整え構えを決め、読みに集中していただきたい」
「そうなんだ、序歌かあ。了解。中断させてごめんね」
「では」
気を取り直して、といった感じで一時停止を解除し、もう一度初めに戻してくれた。
『なにわづに さくやこのはな ふゆごもり いまをはるべと さくやこのはな―――いまをはるべと さくやこのはな―――ほ』
序歌がよみ終わった途端。
バンッ、ババン―――ッ!
畳を叩く大きな音とともに、かるたの札が吹っ飛んでいった―――。