第32章 私立リアリン学園!12時間目~アルバート~
そこで、ふと思い立ち、太宰さんを追いかける。
「ちょっと待って」
「女性に引き止められるのは、なかなかいいものだね」
「そういうんじゃなくて。ねえ、明日も誰も来なかったら、勉強教えようか?」
「なぜだい?」
「なぜって………試験が近いから、少しでも勉強した方がいいんじゃないかと思って。また留年したら困るでしょ」
「ありがたい申し出だねえ。けれど、勉強しても試験の日に気分が乗るかどうか」
「は?気分が乗るかどうかって………?」
―――何、それ!
試験を受けるか受けないか、気分によるわけ?
問題は、そこ?そんな手前なの?
「あのね、試験ってのは、気分が乗るとかどうとか以前に、受けるのが必然なの。とにかく、明日は鞄を持って来て!」
いつも本を一冊持ったきりの身軽な出で立ちなことに気づいて、そうつけ加える。
「勉強はきちんとしているんで、俺のことは心配ご無用。とし子先生の方こそ、試験問題作成で忙しいのでは?」
「もちろんそうだけど」
テスト問題作成は、職員室内でと決められているので、ここではできない。
どうしようかなと思ってはいるけど、せっかく顧問になったのだから、なるべく顔を出したい。
けれど、肝心のかるた部がこんな状態じゃ、どうしようもないよね。
「かるた部は、ご覧のとおりだよ。だから、しばらくはテスト作りに専念したらどうかな」
「ん~、そうだね。ここは、太宰さんにお任せする。じゃあさ、他の部員が来たら、その時は私を呼んでくれるかな?」
「ああ、そうしよう」
こうして、就任二日目にして、かるた部を離れ、放課後は職員室で問題作成することとなった。