第32章 私立リアリン学園!12時間目~アルバート~
………とりあえず、いくらかるた部員でも、これ以上の関わりを持ちたくない。
警戒心を緩めることなく、今いる位置からまっすぐ歩いていく。
彼のいるところと反対方向の窓際に、一つだけ簡素な小ぶりのテーブルが置かれていた。
そこに鞄を置き、静かに椅子を引く。
ここで他の部員が来るのを待とう。皆が来てから改めてゆっくり話せばいい。
次に来るのは、この人より確実にマシな人だろうし。
フウッと息をつき、手の平で仰ぐ。
興奮気味のせいなのか、カーディガンのせいなのか、妙に暑い。
「暑いかい?」
そんな私に気づいて、こちらを見ながら、よいしょと立ち上がる太宰さん。
え、なんで、突然立つの?
思わず身体を強ばらせる。
こっちに来る―――?
「エアコンにしようか」
そう言うと、端の窓を閉め始めたのだ。
「いえっ、大丈夫です!もうエアコンが必要な時期でもないし、このままでいいです!」
「そうかい?でも、とし子先生は、汗をかいているようだね?それなら、せっかくの文明の利器を活用しなければ」
「文明の利器って………あの、太宰さんは暑くないんですか?」
「ん?暑くないよ?夕日が眩しくはあるけど、自然の風は、やはり心地いいね」
サァ―――ッ。
その時、緩い風が吹いて、太宰さんの前髪が揺れた。
よく見ると、聡明そうな整った顔立ちをしていて、切れ長の目が優しい色をしている。
変わった人ではあるけれど………悪い人では、ないよね?
そう思い直して、軽く息をつく。