第32章 私立リアリン学園!12時間目~アルバート~
「………」
そんな人あたりいい笑顔向けられても………いや、これって、逆に不信感が募るよね?
―――絶対に、おかしいぃぃ!!
生徒って歳じゃないし、こんな先生いない。しかも、とし子先生って、誰!?
………危ない。この人、絶対、危ない人。
通報した方が、いいよね?
そっと、ポケットの中に手を入れて、スマホを掴む。
目の前の彼は、ラフな感じに着物を着崩していて、サラリと黒髪をなびかせ、屈託のないほわりとした笑顔のまま、私を見ている。
「あの、あなた、誰ですか?」
ゴクリと唾を飲み込んで、声を振り絞って尋ねる。
「ひどいな、俺のこと忘れちゃったの?」
「………はあっ!?わ、忘れるもなにも………初対面ですよね?」
こんな知り合い、いないっ!!
予想外な突拍子もない返事に、目まいがしそうになる。
「初対面?面白いこと言うんだね。何度か授業を受けてるよねえ」
「え?授業?」
―――この人、何言ってるんだろう?
「そうか、とし子先生は、俺のことを覚えていないのか。残念だな」
「残念って………?それに、とし子先生って………あの、失礼ですけど、本当にどちら様で?」
「ん?3年2組の太宰治だよ?」
「………?」
3年2組の、太宰治?
え、それって………。
「あなた、生徒なのっ!?」
「生徒だよ?」
驚き過ぎて、これ以上ないくらい目を見開き、彼を凝視する。