第32章 私立リアリン学園!12時間目~アルバート~
クン。
年季の入った畳の匂いが染み込んでくる。どこか懐かしさを覚える。
これ、心地いい。
クンクン、スンッ。
もう一度、匂いを確かめて。
―――やっぱり暑いな。窓を閉めてエアコンにしよう。
そう思って窓に近づこうとした時、まさかな人の気配に、飛び上がるほど驚いてしまった。
「―――っ!!!?」
入口から見て反対側に、壁に沿って棚がズラリと並んでいる。そして、棚の終わりと窓の間に少しだけスペースがある。
その、ほんの少しの場所に、人がいる―――!?
きっちりと正座をしていて片手に持った本を目線にかざし、微動だにしない男の人。
それに………え、何、あの服。着物?浴衣?いや、どっちでもいいんだけど。
なんで、そんな格好してるの!?
どうして、ここにいるの!?
あまりの驚きに、声が出てこない。
明らかにおかしい。どこかから入り込んだ不審者かも。
どうしよう――――――っ!!!
と、一人慌てふためいている私に気づいたようで、着物の彼が、こちらに顔を向けた。
「やあ、とし子先生」
ニコリと。
今のこの状況に相応しくない、目がなくなるほどの満面の笑顔が、そこにあった。