第32章 私立リアリン学園!12時間目~アルバート~
「う、嘘でしょ?だって、あの、明らかに歳がおかしいですよね?どう見ても生徒って歳じゃないですよね?」
「生徒だよ。見るかい?」
そう言って、懐に手を差し入れ―――生徒手帳を開いて見せた。
少しだけ近づいて首を伸ばし、中を覗き見る。
3年2組、太宰治。確かに中の写真は、制服を着た彼だ。
「だって、これ、何年前?あなた、卒業生ってこと?」
そう言いながら、生徒手帳の年号が今年のものだと確認できてしまった。
「見覚えないかい?古典の授業を二度ほど教えてもらったよ。平家物語は、実に興味深いね」
平家物語は、今、3年生の授業で扱っている。
私は、基本、3学年の1組を受け持つことが多いので、他のクラスの生徒をまだ把握できていないんだよね。特に3年生は、1組以外は数えるほどしか担当したことがないし。
―――3年2組、ね。こんな人、いたかな?
あー、でも、後ろの方で寝てる人が、こんな感じの髪をしてたような気がする。でも、着物は着てなかったよね?
「あのぉ、失礼承知で聞きますが、太宰さんて、いくつですか?」
「年齢を聞くなんて失礼だねえ。とし子先生が疑いたくなる気持ちはわかるよ。この歳まで学生なんて、俺だって嫌になっちゃうからね」
その割には、ニコニコと楽しそうに言ってるなあ。
「えっと、つまり、留年続きってことですか?」
「そうとも言うね」
「そうとも言うねって………そうとしか言いようがないですよね?どうしてそんなに留年してるんですか?」
「どうしてだろうねえ」