第32章 私立リアリン学園!12時間目~アルバート~
私立リアリン学園! 12時間目~アルバート~
~二年一組 アルバート=ブルクハルト~
今日は、待ちに待った合唱コンクールの日。五、六時間目を使ってホールでの発表が始まった。
広大なホールに、生徒達の清らかな歌声が響いている。
どのクラスもまとまりがあり、素晴らしいハーモニーを奏でている。最初の頃と比べると、格段に上達している。練習の成果が存分に出ているのが感じられる。
この数週間の練習風景が思い浮かんでくるなあ。
ようやく秋の気配が感じられるようになってきたはずなのに、生徒達の熱気もあってか、ホールの中は普段よりも暑く感じられる。薄いカーディガンを羽織っているせいもあるか。
フウッ。
パタパタと片手で顔の周りを仰ぎ、もう片方の手に持ったハンカチで汗を拭う。
うっとうしくまとわりついている袖をそっと捲ると、両手首にくっきりとついた縛られた痕が痛々しく目に入る。
痛みはほとんどない。それでも、これを人目にさらすわけにはいかないから。
ため息をつきながら、袖を伸ばして手首を覆う。
―――昨日の出来事が、頭に浮かんでくる。
あの後、アーサーは、ゆっくりとネクタイをほどいた。
両の手首に慈しむように唇を寄せ、そこへ優しいキスを落とした。
けれど、その眼差しは鋭かった。