第4章 ピアノレッスン~シド~
~真実~
「ロイドと何かあった?」
―――ロイド。
その名前を耳にして、私の表情は固まる。
会ったら、聞かれるとは思ってた。
でも、なんて答えようかまでは、考えてなかった―――。
私は、早まる鼓動を抑えようと深呼吸をして、夜空を見上げる。
満月にほど近い月が優しく輝いていて、小さな星々が瞬いている―――。
泣き出したくなりそうなくらい、綺麗な夜だ。
それなのに、私は、心臓をギュッと掴まれたような、苦しさを覚え、縮こまる。
ひと握りの塵のようだ………。
「何があったかは聞くつもりない。だから、話す必要ないから」
私は、驚いて、モー君を見つめる。
「でも………」
「ロイドの話、聞く?」
「………」
そう聞かれて、私は黙る。
シドの話なんてしたくない。聞きたくもない。
けれど。
知りたい事がたくさんある。わからない事も。
このままでいたら、それらはすべて謎のままになってしまう。
私がモー君に会いたかったのは………すべてに納得したかったから。
だから―――。
「腹立ち過ぎて、ムカムカするけど………聞いておく」
モー君は、そんな私に優しい微笑みを向けて、話し始めた。
「ロイドとは、昔からの知り合いなんだ」
最初にそう言い出したモー君。
やっぱり、そうなんだ………。
「………腐れ縁って、感じかな。今は、仕事ついでに会う事が多い。最近では、君がウィルツに視察に来る事が決まって、反外交勢力の動きを探ったり、視察先の下調べでウィルツに滞在してたから」
「シドって、そんな仕事もしてるんだ」
私が、安全に視察できるようにって事だよね………。
「マインがプリンセスになったばかりの頃から、いつもロイドは君の話ばかりで。無意識かもしれないけど、マインの話をする時のアイツは、愛しくて堪らないって、そんな感じで………」
………え?
「………っ、ちょ、ちょっと待って!今………何て?」
私は、モー君の言葉を遮る。
「ん?ロイドが、君の事を好きって………え、もしかして、気づいてなかったの?」
モー君が、驚いてそう言う。
けど、私のほうが、彼の何倍も何倍も驚いて―――。