第29章 私立リアリン学園!11時間目~イケヴァン・アーサー~
アーサー達は、学園を救うためにリアリン学園長を追い出した。それは、非難すべきことだけど。もしそのままで、経営が破綻したら?
横暴な乗っ取りも、後には学園を救ったと評価されることになるかもしれない。
伯爵が学園長になることで経営が回復した場合、その時はきっと、真の救世主となり得る。
―――そんな正論、言わないでほしかった。
私の鈍い頭は、判断しかねていた。
キンコンカンコン~ ♪
昼休みを終えるチャイムが鳴り響く。
その音に、ほっとする。
「このことは、黙ってる。誰にも言わない。とりあえず、授業があるから行くね」
とにかくこの場を去りたい。それから、ちゃんと考えたい―――。
「待って」
歩き出そうとしたところ。
キュッと、左の手首を掴まれる。
「5時間目は、どこで何の授業?」
「………」
鋭い目つきで顔を覗き込んでくる。
手首を掴む力が強くなる―――。
「ねえ、何年何組?」
「あの、私………」
………知ってるんだ。
次の授業が、空きだってことを。
なにもかも、お見通しなんだ―――。
「俺に何か言いたいことない?」
「な、何も………」
………これだけは、気づかれたくない。
しっかりと、手のひらを握り締める。
これだけは、渡せない―――!
「………ゃ、痛っ!」
途端に、手首を捻りあげられ、ギリギリと絞めつけてくる。