第29章 私立リアリン学園!11時間目~イケヴァン・アーサー~
ビクンッ!
大きく肩を震わす。
今まで、こんなにも怯えたことがあっただろうか―――。
恐ろしさのあまり、その場に立ちすくんだまま。アーサーの方に視線を向けてはいるけれど、まともに顔を見れない。
………なんで、アーサーがここにいるの?
ギュッと強く、左手の中のデバイスを握り締める。
「あ、の、電話が鳴ったの。だから、その………」
「電話?それ、パソコンだよ」
応接室側のドアに背を預けて腕組みをしているアーサー。
顔は笑っているようだけど、絶対、目は笑ってない。
「パソコンは………伯爵が、電源をつけっぱなしにしてたみたい」
震えそうな声を隠して、白々しい嘘をつくしかなかった。
「ふうん?そう?」
「………なんでここにいるの?出かけたんじゃなかったの?」
「俺も行くと思ってた?出張は伯爵だけ。俺は単なる荷物運び。すぐ戻るって言ったよね?それから、じゃあ、また後でねって。今がその『後でね』ってヤツ」
唇を噛み締める。
………どうして、こんな勝手な解釈をしちゃったんだろう。午後から出かけるって、荷物を持って部屋を出たから、てっきりアーサーも一緒に行くものと思ってしまった。
だから、伯爵とアーサーに見つかることは、ないって、どこかで安心していた。
それなのに―――。