第29章 私立リアリン学園!11時間目~イケヴァン・アーサー~
伯爵が腕時計に目を落とし、ナプキンで口を拭って立ち上がる。
「悪いけど先に出るよ。マイン、楽しかったよ。ありがとう」
アーサーが小ぶりのスーツケースとアタッシュケースを持って、伯爵に続く。
出かけるには、大荷物。海外に出張なのかな。
そうなると、またアーサーとは、しばらく逢えないってことか………。
「あ、俺は、すぐ戻るよ?だから、そんなに寂しがらないで」
「べ、別に寂しがってなんかっ」
嬉しそうにニッと笑っているアーサー。
どうして、この人はこんなに、人の考えが読めちゃうんだろう。
―――私が分かりやすいだけ?
「マインは、ゆっくりデザート食べて。セバスチャンが片付けに来るから、このままでいいよ。じゃあ、また後でね」
伯爵とセバスチャンが去っていき、一人、のんびりとデザートのチョコレートケーキを味わう。
そうだ。後片付けは、私がやろう。次の授業は空きだから、時間はある。
ケーキを食べ終えて、お皿を片付け始める。
と。
プルルル、プルルル………。
隣りの学園長室から音が聞こえてきた。
え、あっ、電話だ!
学園長室へと繋がるドアの取っ手を回すと、鍵が掛かってなく、ドアが開く。
大きな机に置かれた電話が着信音を響かせている。
電話を取らなくちゃと、とっさに思って来たけれど………考えてみれば、人の電話に出るわけには、いかないよね。