第29章 私立リアリン学園!11時間目~イケヴァン・アーサー~
なすすべもなくその場に立ち尽くしていると、着信音が途絶え、留守録に切り替わった。
『ただいま留守にしております………』
そう始まる、お決まりの応答メッセージが流れていく。
『………ピーと鳴りましたら、メッセージをどうぞ』
ピーッ。
『こちらは、ロイヤルバンク・オブ・ジャパンです。本日、一件のご入金がありました。ご確認ください。なお、この電話は、音声自動サービスです。返信はできません。ご利用ありがとうございます』
プツン。
そうして、電話が切れた。
自動音声同士のやり取りだあ。
ロイヤルバンク・オブ・ジャパンって………どっかで聞いたことある名前。
あ。
これって、黒崎の裏金の入る銀行だよね?
ただの偶然?
伯爵も何か関わりがあるのかな。
ふと。
すぐ横に置かれたノートパソコンに目がいく。
―――今は、誰もいない。もし来るとしても、片付けにくるセバスチャンだけ。
もしかしたら、何か見つかるかも。
私は、好奇心に勝てず、ノートパソコンを開いた。
電源ボタンを押すと、すぐに起動を始める。ドキドキしながら、USBデバイスを差し込む。
と、画面上にたくさんのフォルダが現れ、次々と開いていく―――。
学園の経営状況がグラフになっているのが、まず目に入ってきて驚く。
緩やかだけれど、確実に下降線を辿っている。
学園の経営って、うまくいってなかったんだ?
お金持ちの生徒ばかりだから、儲かってるイメージだったんだけど。
内実は、苦しかったりするんだね。
潰れるってことはないよね?でも、このまま下がり続けたとしたら、その可能性もあるのか。