第29章 私立リアリン学園!11時間目~イケヴァン・アーサー~
~誤算~
視聴覚室の授業を終えて、焦りながら片付けをしている。
いろいろ考えてたせいで、進行が滞って授業が長引いてしまった。
教職に専念するって決めたばかりなのに~~。
それでも、バタバタするのは、みっともない。だから今、平静を装いつつ、実は心の中では大慌て中ってとこ。
「マイン先生、俺、何か手伝おうか?」
レオが声をかけてくれる。
「大丈夫。それより、終わるの遅くなっちゃってゴメンね。レオ達も次も移動教室だったよね?早く戻らないと」
「じゃあ、そうする。マイン先生も、あんまり慌てないでね」
軽やかにウィンクをして去って行くレオ。
そんなに慌ててるように見えてたのかなあ。
………って、本気でマズイ!
次の3、4時間目の授業は、ホールでの3年1組の合唱練習だ。
これじゃ、職員室に戻ってる時間がない。
そうだ、持って行く物もないし、このままホールに向かえばいいのか!
でも、鍵を返さないと黒崎に、また嫌味言われるよね。
あ~~、どうしよう!?
そうして、視聴覚室から足早に歩き出したところ………。
「だ~れだ?」
楽しげな声とともに、背後から両目を手で覆われて、視界が塞がれる。
「………っ!」
この手、この声の主が一瞬で誰か悟った私は、声を張りあげる。
「アーサー!!」
「あったり~♪」
パッと手が離れて、目の前の明るさが戻ってくる。