第29章 私立リアリン学園!11時間目~イケヴァン・アーサー~
「なんで俺がこんなこと………」
缶を持ってブツブツと言いながら、時計回りに歩き出す。
チャリン。
専科の先生達は、その缶に鍵をそれぞれ入れて行く。
「鍵の使用時は、必ず黒崎先生を通すコト。このノートに持ち出し記入のサインも忘れずに」
専科の先生達が、ボソボソと不満の声を口にし出した。
「そんな面倒な事するのか?」
「準備室くらい自由にしてほしいよ」
すぐ前に黒崎がやってきた。けれど、私は基本教科の担当だから、準備室の鍵なんて持っていない。ただ黙って通り過ぎるのを待つ。
と、ジロリとあの嫌な目つきで私を見たので、すぐに目を逸らしてやる。
あ~、こんなヤツと目が合うなんて最悪!
「それから、3年1組のロイド=グランディエは、卒業と言う名の退学処分にするから。ジル教頭、手続きヨロシク」
ロイド=グランディエ?シドのことだ。
退学処分って!?
先生方も一層、ザワザワ言い始める。
「就任早々、勝手な事をされては困ります」
ジル教頭が、皆の不満を代表するかのようにアーサーへと進言する。
「ん、何?俺に意見するつもり?悪いけど、教頭にそこまでの権限ないから。黙って従ってもらうよ?」
アーサーは、笑顔を浮かべてはいるけれど、強い口調でそう言い切った。
二人の間に、一触即発といった空気が漂っている―――。