第29章 私立リアリン学園!11時間目~イケヴァン・アーサー~
「じゃー、早速だけど、専科教師の皆々様には、この缶に準備室の鍵を入れてもらおうかな」
アーサーが、右手に持っていた透明な缶を頭の上に持ち上げて振っている。
あの缶………絶対に、お菓子の空き缶と断言できる。よく見かけるもん。どこにでも売ってる、安価だけど美味しい、あのクッキーの缶に間違いない。
「基本、教師はこの職員室で過ごしてほしいんだよね。準備室は、授業の前後にのみ使用のコト」
アーサーは、一旦、すぐ前の机にその缶を置くと、左の脇に挟み持っていたファイルをパラパラと捲る。
「主任の先生にお願いしようかな………だ、れ、に、し、よ、う、か、な………とっ、黒崎先生いる?」
アーサーが見回す。
皆の視線を辿ると、渋々といった感じで顔の横に手を上げている黒崎が目に入った。
チョイチョイと手招きされ、前へ進み出る黒崎。
「鍵の管理は、黒崎先生に任命!」
「主任、だ」
黒崎は、苦々しい顔つきをして、小さく呟いた。
「黒崎先生。はい、これ。じゃ、鍵集めに回ってー」
アーサーは、涼しい顔で透明缶を黒崎に押しつける。