第26章 私立リアリン学園!9時間目~シド~
裏通りにある小さな古びたカフェ。
客は、私とシドしかいない。
白髪に分厚いメガネをかけた小柄な店主が隅でグラスを磨いている。
店に入った時のシドと店主の様子から、馴染みの店であることは容易に推測できた。
そして、今―――。
アイスコーヒーとアイスミルクティーが手つかずのまま二人の間に置かれていて、グラスは水滴に覆われていた。
カランと小さく氷が音を立てる。
年季は入っているが、しっかりとした上質の木製のテーブルに椅子。
空いている隣りの席に、さきほどのお店のロゴが入った厚手の大きな紙袋が鎮座している。
木枠がシックな小窓からは、日差しが降り注いでいる。
どう切り出していいか、わからない。
シドから何か話そうなんて気は、毛頭ないようだ。
静かに時間が流れていく―――。
「ジル教頭から聞いたよ」
言葉を選びながら、口を開く。
「そうか」
シドは、腕組みをして、窓の外を見ている。
「シドが何をしてるかは詮索するなって言われたから、それには従う。でも、そういう事のプロって知ったから、お願いがあるの」
「お願い?」
私に向き直るシド。
「写真を貼った犯人を探してほしい」
「お前、まだそれ、言ってんのか?見つけてどうすんだよ」
「どうするって………なんで、そんなことしたのか聞きたい」
「聞いてどうなるんだよ」
「わからないけど」
「報酬、払う気になったのか?」
そう言って、私の頬を手の平で撫であげる。